語彙・ボキャブラリー(7)

前ページで述べたような方法を続ければ、用法、語感を含めてactiveな語彙形成をすることが出来るはずです。と同時にこれらの語彙を「音」としても認識出来るようにしていかなければいけません。いわゆる聞き取れるのか?ということです。

  • ただ私はこれは(語彙学習の)プライオリティーとしては前ページの作業よりは低いと思っています。なぜならば、辞書を引いて発音記号から音がほぼ正確に再現できればその都度音をイメージできるからです。慣れてくるとかなり高速で発音された際の音もイメージできるようになります。そう言う意味では、まだ発音記号がはっきり読めないという人は一度おさらいをしておくと良いでしょうね。
  • そういう意味では、この音の学習は前ページでの習得語彙を音のとしてもとれているかどうか、といった確認あるいはおさらい的な意味合いが強いというのが私のイメージです。もちろん、多聴にはそれ以外の役割が沢山あるのでもちろんやる意味があるのですが。
  • さて、音として聞けるか?ということですが、例えば映画を例にとりましょう。通常、映画で使われる90%程度の語彙は3000語程度の基本単語で成り立っていると言われます。これは私も実際そうだと思います。ではその3000語の意味を曲がりなりにもpassiveに覚えている人が映画を観てどのくらい分かるのでしょうか?5〜10%も分かればいい方だと思います。
  • では我慢して見続けたらいつかは分かるようになるでしょうか?難しいと思います。意味不明の音の流れを聞き続けても何のフィードバックがないわけですから当然です。フィードバックをしながら多種のジャンルの一般的な会話を聞き続ける、多読と一緒ですね。「これだけやれば大丈夫」的なパッケージを期待しがちですが、それはあっさり無いものと認識した方が得です。
  • フィードバックするには何が必要でしょうか?このレベルの学習者には話される内容のきちんとしたスクリプトと和訳が必須だと思います。その意味で以前から1000時間ヒアリングマラソンなどを良教材として紹介していますが、これはTOEIC550〜600点以下の人には少しまだ難しいかもしれません。そういう意味ではテレビ・ラジオの講座にはこのレベルに向いた物が多数あるので調べてみると良いでしょう。「やさしいビジネス英語」などはかなり幅広いレベルに対応する良い内容です。(note: リンクを張ろうとして調べたら「実践・ビジネス英語」という番組に名称変更されていました。確かに余り「やさしい」と言えない面もあったためでしょうか…)
  • ふ〜ん、なんだか先の長い漠然とした話ですね、という声が聞こえてきそうですが事実、そうなので仕方がありません。それでも私は「なにかこれをやれば大丈夫」的なパッケージ物がやりたい!語彙を集中的にやりたい!という人がいるかもしれませんね。少しだけ例を挙げてみましょう。
  • 語彙を取り上げた数少ない通信講座の中で唯一お勧めしてもいいな、と思うのはボキャビルマラソン くらいでしょうか。おなじみアルクの商品ですがこれはよくできています。アルクは自社の12000ワードのデータベースをlevel1から12までわけて取り扱っています。その中のlevel 1〜6から基本単語を3000語選んだ内容です。したがって対象単語はその意味で私のいう基本単語にかなり近いです。level 6〜12の中から語彙を選んだボキャビルマラソンパワーアップコース というのもありますが、まずは前者からだと思います。
  • この講座の良さは語彙を出来るだけ有機的に様々な面(音、使われ方など)から触れることが出来るように構成されていることでしょう。アルクならではこなれた訳の定義も好感が持てます。また同じ単語に複数回触れるようにデザインされているので記憶の定着もしやすいと思います。これだけやれば基本単語はactive・passive全て大丈夫、とはいいませんが集中的に語彙に取り組みたいという意向であれば使えると思います。
  • もう一つが本のたぐいですが、単語帳的な物はお勧めしません。意外に良いのがTOEICの問題集です。たいていCDがついてきますので音としても学習できます。なぜいいかと言いますと:

    • TOEICでは幅広い、かつそれほど専門的でない話題が取り上げられる。当然、使用される語彙は殆ど基本単語の範疇
    • 問題形式なので集中が効く。だらだらと単語の羅列を眺めるよりは遙かにいい。また、よくある「単語単位」で英語・和訳と交互に無機質に読み上げる物がありますが、あれではactiveには決してなりません。
    • 問題の正誤・理解度を見ながらどれだけ使われている語彙が読め、聞き取れるかのフィードバックがリアルタイムで分かる
  • ご存じのように、私のHPでは「TOEICの為のTOEICのお勉強」は決してお勧めしていませんが、英語力の向上のためにTOEICの問題を利用するというのはありです。
  • この手の本はとても多いので紹介の必要はないとおもいますが、一冊だけ例を挙げておきます - TOEICテスト総合対策。たとえばこの本は初心者から650点くらいまでを対象にしていますが、試験の内容の解説も当然付いてきますので初めての方は一冊はあっても良いでしょう。